自由律俳句
宮川 高宏
3・11   二十六句
 
三月の海が殺意を落として逝く
 
人の世にくらがりあらば海ゆっくりもり上がる
 
また一つ町 波の中に消ゆ
 
人間の悲しみ色か黒い波
 
日常を逸脱しているパソコンに拝む
 
くらやみに炎が見える贖罪のひとりに還る
 
車が棺となりて真実をぶち込んでいる
 
そこにはいったい何があったのだろう
 
ケータイ握りしめ涙ふく双手なく
 
車がころころとして台詞のないスペクタクル
 
立春の花より鉄の匂ひする
 
群つどふ魂みな鳴く春の浜
 
日常などあとかたもなし山河ある
 
名前ありうち捨てられし木片に
 
空と地と橋なき川だけ失語して去る
 
行方不明者のまま形骸化してものを云う
 
海ばかり見ている犬
 
水の上に漂うものも形見とす
 
それは国境もなく色もなくやってくる
 
目を開けよすでに渚は染まりをり
 
放射能の上の太陽 魂を凝視(みつめ)つづける
 
その声を聞けヒロシマナガサキを知らぬ子よ
 
フクシマと言えば舌を出す清志郎忌
 
冥福は誰がために祈る政治劇
 
波と風にふるさとから追い出される
 
 
花嫁や復活を信じるこころ持ち
 
 
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